水なんてどれも一緒と思っていませんか?実のところ水には硬水と軟水があり、それぞれにの特徴を理解しておくと飲食がより美味しく感じられます。
では硬水と軟水とは何なのか、この違いについて見ていきたいと思います。
「硬水」と「軟水」にはどのような違いがある?
硬水と軟水の違いは、水1リットルあたりに含まれるマグネシウムやカルシウムなどのミネラルの量です。
WHOが示す基準によると、ミネラルの含有量が60ミリグラム以下が軟水、60ミリグラムから120ミリグラムが中軟水、そして120ミリグラムから180ミリグラムが硬水、180ミリグラム以上が超硬水となります。
当然のことながらミネラルの含有量が多いと味に変化が生じます。
そのため軟水の方が味がマイルドで飲みやすいとされています。
硬水のメリットやデメリット
硬水を飲むことのメリット
硬水にはたくさんのミネラルが含まれているため、これらが体に作用してメリットをもたらします。
まずマグネシウムやカルシウムが腸管を通過すると、そこに水分が集まるようになります。
この作用は便秘解消につながります。
またこれらのミネラルは血液をサラサラにする効果もあり、動脈硬化などの循環器系の病気予防にも貢献します。
加えて汗をかくとミネラルが体外に排出されてしまいますが、こうした状況におけるミネラルの補給にも硬水は役立ちます。
硬水を飲むことで生じるデメリット
何といっても硬水のデメリットとしてまず挙げられるのは、独特の風味です。
この風味ゆえに軟水に慣れてしまっている人は硬水を飲みづらいと感じるかもしれません。
またメリットの項でも述べましたが、硬水は腸管に溜まりやすく便通を改善してくれます。
しかしもともと便通が良い人にとって、この作用が下痢を生じさせるなどマイナスの効果をもたらすことがあります。
また場合によっては胃腸に負担をかけることもあるために、あまりお腹が丈夫でない人は要注意です。
軟水のメリット・デメリット
軟水を飲むことのメリット
硬水に比べると軟水はミネラルの含有量が少ないために、口当たりがよく飲みやすい水です。
そのため抵抗なく飲むことができます。
また胃腸にかかる負担も少ないために、のどが渇いたときにガブガブ飲めるというのも魅力です。
また料理や飲料に用いる際、ミネラルが少ないために味や香りにあまり影響しないというのも軟水のメリットです。
軟水を飲むことで生じるデメリット
軟水にはミネラルがあまり含まれていません。
そのためミネラルを摂取したいという人や、汗をかいた後の飲料水としては物足りないことでしょう。
またせっかく自宅にウォーターサーバーを設置し、ミネラルウォーターを飲もうと計画しても、軟水のボトルを注文してしまうのであれば十分な量のミネラルを摂取できなくなってしまいます。
そのためどの種類の水を注文するかは味だけではなく、ミネラルの含有量も考慮しなければなりません。
実は、日本人には軟水が適している
日本の水道から出る水のほとんどは軟水です。
つまり私たち日本人は幼いころから軟水を飲んでおり、その味に慣れているのです。
加えて日本の地形の多くは軟水を作り出す構造となっています。
傾斜が多く、地下水が短時間で地層を流れるためにミネラルをあまり含まない天然水が生成されるのです。
そのためお店で販売されているミネラルウォーターの多くも軟水を使用したもので、こうした状況も相まって日本人は軟水を好んで飲んでいるわけです。
慣れない地で硬水にチャレンジするのはリスクを伴う
硬水に慣れている人が軟水を飲むことと、軟水に慣れている人が硬水を飲むこととは状況が異なります。
前者の場合はミネラルが多い水からそうでないものに切り替えただけなのに対し、後者は慣れないミネラルをいきなり摂取することになります。
後者の場合は胃腸に負担がかかることとなるために、場合によっては体調を崩すことになります。
また旅行で訪れた場所でいきなり硬水を飲むなら体が疲れた状態でミネラルを摂取することになり、胃腸がうまく順応できないこともあります。
こうした状況には注意が必要です。
赤ちゃんや小さな子どもが飲むのは軟水がおすすめ
赤ちゃんや小さな子どもは胃腸が未発達な状態です。
この状態でミネラルが豊富な硬水を与えてしまうと胃腸がうまく働かず、体調不良を起こしてしまいます。
対照的に軟水にはミネラルがあまり含まれていません。
そのため赤ちゃんに粉ミルクなどを溶かして飲ませるには、軟水がベストです。
また軟水にはミネラルの独特の風味がないために粉ミルクの味が変わることなく、赤ちゃんに美味しく飲んでもらうことができます。
硬水、軟水を使った飲み物にはどのような違いが生じる?
お茶の場合
実のところ、お茶に使用する水は非常に繊細であるとされています。
なぜなら硬水に含まれるカルシウムはお茶に含まれるシュウ酸と結び付き、お茶の渋みを軽減させる働きがあるからです。
そのため硬度が10ミリグラム以下の軟水を使用すると強い渋みが出てしまい、お茶の良さが消されてしまいます。
一般的には硬度が50ミリグラムから80ミリグラムの軟水を用いるのが良いとされていますが、渋みが気になる場合はもう少し硬度の高い水を使用するとお茶が美味しくなります。
コーヒーの場合
コーヒーも硬水と軟水でかなり風味が変わってきます。
まず軟水で入れた場合、コーヒーの口当たりはまろやかになります。
また強い苦みも出ないためにほのかな酸味を楽しむことができます。
そして硬水を用いて入れたコーヒーは酸味が少なくなります。
そのため苦みが強くなり、より深みを感じるコーヒーに仕上がります。
コーヒーの場合は豆の種類に応じて水の種類も変えることで、良さを引き立てることができるのです。
お酒の場合
水で割るお酒の代表格は、焼酎とウィスキーです。
これらに対して軟水を用いるなら、水がお酒の風味を邪魔することはありません。
そのため口当たりはまろやかで、尚且つお酒の甘さが引き立ちます。
そして硬水で割った場合ですが、味の深みが増して軟水のときよりも味が濃く感じられます。
このような状況により、食事と一緒に楽しむときは軟水で、そしてお酒そのものを楽しむ場合は硬水で割るのが良いとされています。
硬水、軟水を使った料理にはどのような違いが生じる?
炊飯の場合
炒飯のようにお米がメインとなる料理は、お米の硬さが美味しさを大きく左右します。
日本のお米のように粘り気や甘みが強いお米を使って炒飯を作る場合、軟水がお米の良さを引き立てます。
しかし歯ごたえのあるものを作りたい場合、硬水でお米を炊くと歯ごたえが増して存在感を出します。
また硬水で炊く場合は日本のお米よりもタイ米のように細長くパラパラした食感のものの方が美味しい仕上がりとなります。
そのためパエリアやピラフといった料理は硬水で炊くのがおすすめです。
出汁やスープの場合
出汁の味は非常に繊細で、よく味わうとじんわりと口の中に広がっていきます。
こうした素材の味を活かしたものの場合、軟水の使用がおすすめです。
そしてスープですが、これは具材に何を用いるかによって軟水、もしくは硬水を用いるべきかが決まります。
まず肉が具材のメインとなる場合、硬水を使用できます。
硬水に含まれるカルシウムは肉を固くする成分と結び付いて灰汁となります。
そのため灰汁を取り除けば肉が柔らかくなり、美味しいスープが出来上がります。
野菜の煮物の場合
野菜は軟水で茹でると柔らかくなります。
そのため煮物を作る際も軟水を使用すれば柔らかくて美味しい野菜を楽しむことができます。
また軟水は出汁や調味料を野菜によく染み込ませる働きがあり、味付けにも効果的です。
しかし硬水を使用すると煮崩れしにくくなるために、形をしっかりと残したい野菜を煮込む場合は硬水がおずずめです。
また歯ごたえを残したい野菜をの込む場合も、硬水が適しています。
魚の煮物の場合
煮物を作る際、軟水を使用すると出汁や調味料が具材によく染み込みます。
これは野菜に限って言えることではありません。
そのため魚の煮物を作る際も、軟水が適しています。
また軟水は魚の身をふっくらさせる働きがあり、見た目や食感を引き立ててくれます。
ちなみにピリッとした少し辛みのある魚料理の場合、硬水を用いた方が魚の良さが引き立つとされています。
肉の煮物の場合
先にも少し述べましたが、硬水に含まれるカルシウムは肉のタンパク質と結び付いて灰汁となります。
この作用によって肉は柔らかくなり、美味しい肉料理が完成します。
そのため角煮などの肉をじっくり煮込む料理を作る場合、硬水を使用するのがおすすめです。
ちなみに灰汁は丁寧に取り除かなければ味や色身を邪魔することになりますので、硬水を使って肉を煮込む場合は多少手間がかかります。
パスタを茹でる場合
パスタはコシが命です。
そのため茹ですぎて柔らかくなってしまうと本来の味を思う存分楽しむことができません。
実のところ、硬水に含まれるカルシウムはでんぷん質を固くする性質を有しています。
つまり硬水を用いてパスタを茹でるとコシが強くなるのです。
このような理由により、パスタを茹でるときは硬水を用いると美味しく仕上がります。
軟水と硬水でこんなに違う
これまで見てきたように、軟水と硬水にはミネラルの含有量が異なるという特徴があります。
そしてこのミネラルには様々な作用があり、それゆえにシーンにマッチした使い方をすることで、料理や飲み物をより美味しくいただくことができるのです。