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湊川神社 「楠公さん」と親しまれて約150年、地域に根差す温かい神社。

神社外観

「都会のオアシス」。まさにその言葉が似合う、緑豊かな地に建立された湊川神社。関西では有名な神社として「楠(なん)公(こう)さん」の愛称で親しまれてきました。

地元の人々との繋がりを大切に、お宮参り、七五三など様々な場面で参拝されています。建立より150年、神戸の地に住む方々にとって欠かせない神社として在り続けてきました。そんな「楠公さん」の魅力に迫りました。

目次

湊川神社とは

本殿の写真

1692年、楠木正成公の没後約300年の頃に、水戸黄門として有名な徳川光圀が楠木正成公の墓所を建てました。さらにそこから約200年、明治天皇の勅命により1868年(明治元年)に、より正成を偲ぶための神社として現在の地に建立されました。

正成公が亡くなった場所に建てる案が出され、1336年に湊川という川のそばで起こった「湊川の戦い」が由来となりこの名が付きました。戦時中、大空襲により当時の建物は焼失し昭和27年、現在の神社建物が建築されました。再建時、当時としては珍しく鉄筋コンクリートで造られ、天井には164点という多くの天井画が施されているのが特徴です。

多くの神社では、本殿の他に祈祷殿と呼ばれる祈祷を行うだけの専用の御殿があり、そこでご祈祷をする場合が多いですが、湊川神社では本殿でご祈祷を行うことができ、参拝者からはその点も好評です。

【湊川神社 特別インタビュー】

神戸の地に建立されてから約150年。規模の大きい神社ではありますが、地域の方には「日常の中の神社」として親しまれ、老若男女問わず多くの人が気軽に訪れています。

参拝者の思いだけでなく日常の暮らしも見守る、そんな温かさのある神社のさらなる魅力を、神社の方にお聞きしました。

タクシーでも通じる「楠公さん」

楠木正成銅像の写真
編集部

楠木正成公を祀る神社、ということですが地元の方にとっても正成公はやはり重要な人物なのでしょうか。

広報室長

昭和の頃は、やはり皆さん楠木正成公を偲んで参られる方も多かったと聞いています。ですが、現代では昔ほど伝えきれていないというのが実情です。今後はその点についてももっと尽力していきたいと考えています。

編集部

歴史上のことですから、色褪せてしまう部分もあると思います。それでも地元の方にとってはとても大切な神社、というイメージです。

広報室長

そうですね。戦後、敗戦したことによりGHQからは湊川神社も解体の対象となる指令があったのですが、地元の方が声を上げて守ろうとした動きがあったようです。現在は正成公を祀る神社というよりは、大きな神社ですから人生の節目に来られる方が多いですね。

編集部

地元の方との繋がりの例として具体的なエピソードなどはありますか。

広報室長

たとえば、通勤時に立ち寄られご祈祷をされてから出勤される方などもいますよ。あるいは、仕事の休憩中などにグループで参拝に来られる会社員の方もいますし、みなさん「わざわざ来る」という感じではなく、普段の暮らしの中で立ち寄る神社というイメージだと思います。

編集部

大規模な神社でありながら、本当に地元の方にとっては身近で親しみやすい神社なんですね。

広報室長

ええ、たとえば大阪ですと楠公さんと言うと楠木正成公その人を指す場合が多いと思いますが、この辺りでは楠公さん=湊川神社なんです。タクシーでも「楠公さんまで」と言うと通じるんですよ。

編集部

それはすごい!それだけ浸透している、当たり前だということですね。

広報室長

はい。湊川神社ではいつでも人が常駐しているのでそういった点でも安心感があり、親しみを持ちやすいのだと思います。人気が感じられないという時間がないので、ちょっとした雑談なんかもしやすい場所なんです。

空手教室の写真
編集部

他に、地元の方とのエピソードはありますか。

広報室長

神社内にて空手教室をやっているので、習いに来ている子どもたちのお母さん方ともよく話す機会がありますよ。たとえば、「友達の結婚式に出席するんだけど、熨斗袋の正しい書き方ってどうでしたっけ?」だとか、御守りのことで聞きたいことだとか、そういったちょっとしたことも聞きやすいんです。そういった繋がりがあるので、小さなことでもフラットに聞けるとてもいい関係性が築けていると思います。

小豆島よりも先に、日本最古のオリーブの地

オリーブの樹の写真
編集部

他に神社にまつわるエピソードはありますか。

広報室長

実は、神戸の地は日本で最初にオリーブの栽培が始まった地なんです。

編集部

え!そうなんですね!オリーブというと、小豆島が有名ですが。

広報室長

みなさんそのイメージをお持ちだと思いますが、実は神戸が先なんです。そして、この湊川神社に日本最古のオリーブの樹があるんです。神社の正門をくぐって左手にあるんですが、最近ではそういったお話しも少しずつ広まっているようでオリーブ好きな方で見に来られる方も多いですよ。

編集部

そうなんですね。ですが、なぜ神戸の地でオリーブなんでしょうか。

神戸では、明治の殖産興業の政策で、オリーブやオレンジ、ユーカリなどの植物を育てて外貨を稼ぐという考えがあり、神戸に国営の農業試験場が作られました。その中でも特にオリーブが神戸の気候に合ったようでオリーブ園に改められました。その後、神戸の市街化によって農地を維持していくのが難しくなり、改めて小豆島で栽培されるようになったと言われています。

神社でのイベント

七五三の写真

湊川神社では、お宮参り・七五三などの他、十一(じゅういち)参り・十三(じゅうさん)参りという行事が行われています。十一参りは楠木正成公の息子である正行が初陣を飾ったのが十一歳だったため、これにあやかり十一歳になると一つ大人になるという意味で、男の子に十一参りの機会を設けています。

兜なども神社で貸し出しており、多くの方が訪れています。十三参りは、元々は寺院の習慣として定着していたもので知恵の神様にお祈りし、立派な女性になるようにとお参りする女の子のお参りです。どちらのお参りも他の神社では見られない珍しい行事です。そして成人の際のお参りもすることができ、産まれてすぐのお宮参りから始まり、その後の人生も見守ってもらえる神社です。

夏祭りの写真

そして神社の一大イベントとしては、毎年8月22日~26日行われている夏祭りが最も盛り上がるイベントです。毎年3万人程度の人出があり屋台も多いため、神戸市内だけでなく近隣の市町村からも大勢の方が参加しています。

武者行列の写真

また、楠木正成公に関するお祭りである「楠公武者行列」が5年に1回程度行われており、直近では令和7年5月25日に開催予定です。京都の平安神宮で行われる時代祭りのように馬が出るイベントがあり、兵庫県のみならず関西でも珍しいイベントです。

今後の展望

来年の楠公武者行列で、この湊川神社が楠木正成公を祀っている神社であることを地元の方に改めて周知し歴史的な背景も知ってほしいと考えています。その後は、10年後に正成公の没後700年となるため、そこへ向けてもイベントなどを企画していきたいと考えています。地元の方とこれまで築いてきたコミュニティも大切にし、さらに地元の方に愛されるような、そして困ったときに頼ってもらえるような神社になっていきたいと思っています。

 神社と地域、どこにでもある光景です。ですが、ここ湊川神社での光景は特別。この地に暮らす人々にとっては「困ったときに頼れる神社」です。そんな神社が暮らしのすぐそばにあること、それはきっと地元の方も気づかないうちに心の支えになっているのかもしれません。人生の節目でお参りし、長い人生をずっと見守ってくれる神社。その安心感は神戸に暮らす人々にとって心の拠りどころにもなっています。この先も「楠公さん」としてこの地で愛され続けるでしょう。

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この記事を書いた人

ラボ編集部のアバター ラボ編集部 編集者・取材ライター

歴史と文化遺産に情熱を注ぐ29歳の編集者、山本さくらです。子どもが1人いる母として、家族との時間を大切にしながらも、文化遺産ラボの立ち上げメンバーとして、編集やインタビューを担当しています。旅行が大好きで、訪れる先では必ずその地域の文化遺産を訪問し、歴史の奥深さを体感しています。
文化遺産ラボを通じて、歴史や文化遺産の魅力をもっと多くの方に届けたいと日々奮闘中。歴史好きの方も、まだ触れていない方も、ぜひ一緒にこの旅を楽しみましょう!

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