旧一万円紙幣の肖像画、慶應義塾大学の創設者として有名な福澤諭吉。名著『学問のすゝめ』からも窺えるように、勤勉実直な人物を想像する人も多いと思いますが、少年時代の彼には意外な一面もあったようで…。
現存する福澤諭吉旧居、そして福澤記念館を通して、知られざる新たな人物像が浮き彫りとなりました。
福澤諭吉旧居・福澤記念館とは
福澤諭吉ゆかりの地である大分県中津市。その地に彼が青年期を過ごした旧居が現存しています。福澤が1歳半の頃、父が急死。遺された母子6人で大阪から藩地であった中津へと移り住むことになります。旧居は分かっているだけでもこれまで10回以上修繕が行われ、多くの人の手によって当時の姿を今に留めています。
昨年4月に館内のリニューアルが行われ、展示室の内装や2階展示ケースが新しくなりました。館内では福澤諭吉の著書をはじめ、着物や遺品なども多く展示され、彼の一生をたどることができます。
福澤諭吉旧居・福澤記念館【特別インタビュー】
中津で多くの時間を過ごした福澤諭吉。彼の足跡をたどるにあたってここでの暮らしは外せません。そんな中津にとっての福澤諭吉、そして彼の意外なエピソードについて記念館の方へお話を伺いました。
①中津と福澤諭吉を結ぶ、記念館の存在。
中津の人々にとって、福澤諭吉とはどんな存在ですか？
そうですね、この地の人にとって福澤先生は誇りそのもののような存在です。幼い頃から学校の授業でも学びますし、中津に所縁のある人物、というのは中津の人にとっては常識かもしれません。
福澤諭吉は中津の宝のような存在なのですね。
では旧居についですが、現代に至るまで修繕以外では人の手が加えられていないということでしたが、記念館の建築にもそれは影響していますか。
はい。旧居の雰囲気とリンクするように記念館の周辺は黄土色の土塀が囲っていて、周辺の景観を邪魔しないような落ち着いた造りになっています。
②お酒が好きな「少年」福澤諭吉
記念館では、福澤諭吉について多くを学べることが分かりました。では、一般的にはあまり知られていないようなエピソードはありますか。
一つ、面白いお話があります。実は福澤諭吉は「お酒が好き」だったんです。
お酒が好き、とだけ聞くとあまり意外ではないように思われますが…。
それが、そうではないんです。実は、「少年時代」からお酒が好きだったんです(笑)
少年時代から！というと、10代から飲酒をしていた、ということですよね…？
そうなんです(笑)現代では考えられないですよね。でも、そういったエピソードが福澤先生自身が書かれた自伝に残っているんです。
具体的にはどういったエピソードがありますか？
彼は月代(さかやき)を剃るのが嫌いだったそうなんです。でも、お酒を飲むと剃る時に痛いのを我慢できるというので彼の母親が飲ませていたという話があります。
お母様がですか！？なかなか豪快な方だったんですね。
ですよね。でも、武士らしくないエピソードも自分で書き記して残しているというのがまた、福澤先生らしいところです。
③暗殺の危機を免れた、強運の持ち主。
他に、あまり知られていないエピソードはありますか？
そういえば、福澤諭吉の暗殺計画があったことはあまり知られていないかもしれませんね。
暗殺ですか！？それは聞いたことがないかもしれません。
福澤先生の又いとこにあたる増田宋太郎という人物が首謀者なのですが、この暗殺計画は福澤先生が気づかないうちに未遂に終わっています。暗殺の気配に気づいたのは福澤先生に同行していた人物で、先生も後から聞かされて驚いたというエピソードが残っています。
もしもその計画が成功していたら、と思うと怖いですね。
そうですよね、日本の歴史が大きく違っていたかもしれませんよね。本当に無事で良かったと思います。
④今後の展望について
最後に今後についてですが、こんな施設にしていきたいなど展望はありますか。
現在旧居の保存計画が進行中です。まだ始まったばかりなので、どれくらいの期間がかかるかなどは分かりませんが、保存できる部分は修繕して綺麗に残していきたいと思っています。
なるほど。修繕の間も施設見学はできるんでしょうか。
もちろんです！問題なくご覧いただけますので、ぜひお越しください。地元の方にも、観光で来られた方にも気軽に立ち寄っていただけるような施設にしていきたいと考えています。
施設内でのイベント
令和6年7月、紙幣のデザイン変更が行われ福澤諭吉は40年つとめた「一万円札の人」を交代することになりました。記念館では発行開始年の昭和59年（1984年）、そして前回デザインが変更となった平成16年（2004年）の紙幣、そして今回の肖像交代に伴い、日本銀行から中津市へ贈呈された最終製造となる福澤諭吉肖像の一万円札も併せて展示しています。
また、ひなまつりの特別展示やお茶会などのイベントも多数行っており、地域の方はもちろん観光で訪れた方々も気軽に楽しめるようなイベントを開催しています。
記念館の方のお話を通して、福澤諭吉の新たな一面を知ることができました。彼の足跡をもっと辿りたい方は、ぜひ大分観光の際に立ち寄ってみるのもいいかもしれませんね。
※写真提供 福澤諭吉旧居・福澤記念館
アクセス
福澤諭吉旧居・福澤記念館
住所：〒871-0088 大分県中津市留守居町586
TEL：0979-25-0063
アクセス：JR中津駅より徒歩15分、タクシー3分
営業時間： 9：00～17：00（最終入館受付16：30まで）
休館日：12月31日
URL：https://fukuzawakyukyo.com/
