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丹生都比売(にうつひめ)神社 四神を祀る、神仏習合の始まりの神社。

桜門

日本古来の神道の神と、海外から伝来した仏教の仏。この神と仏が共にあり、共に尊ばれる「神仏習合(しんぶつしゅうごう)」。日本の文化にも大きな影響を与えた、千年以上続く祈りのかたちです。その始まりの地の一つが、この丹生都比売神社といわれています。

今なお高野山と密接な関係にあり、神仏習合の姿を色濃く残して、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」に登録されています。御祭神は、古代の赤色「丹」と水銀を司り、武士からは武神と崇められた女神。日本人の祈りのルーツと、神秘の女神にふれる和歌山の旅です。

目次

丹生都比売神社とは

丹生都比売(にうつひめ)神社(じんじゃ)境内

天照大御神の妹神である「丹生都比売大神(にうつひめのおおかみ)」をはじめとする四柱(よんはしら)の神々をお祀りし、「四社明神(ししゃみょうじん)」の名でも知られている、和歌山県かつらぎ町にある丹生都比売神社。日本書紀の記述によれば、その創建は1700年以上も前となっており、非常に歴史深く由緒ある神社です。

建築の一部は国の重要文化財に指定され、境内はその全域が世界遺産にも登録され、堂々たる風格を感じさせます。「神と仏が共存する日本独自の祈りの形は、ここから始まった」とも言われ、いわば日本人と神との関係性のはじまりを表す神社とも言えます。そんな長く深い歴史を持つこの神社を詳しくご紹介します。

災厄を祓う丹を司る女神

主祭神「ニウツヒメ」は、「丹」を司る女神とされます。「丹」は水銀朱とも呼ばれますが、鉱物「辰砂」より採取される古代の赤い顔料です。日本ではこの丹をあらゆる災厄を祓う神聖なものとして、神事や魔除けに用いました。現在でも赤色をお祝い事に用いたり、神社仏閣が赤く塗られるのは、その名残です。また丹からは水銀を精製することができます。

水銀は様々な用途に使われることから貴重とされ、また神秘的な外見から不老不死など霊的な力をもつと考えられていました。この丹と水銀を司る女神として、「ニウツヒメ」は朝廷からも篤く崇敬され、応神天皇より紀伊山地北西部一帯を神領として寄進されたといいます。その中には、現在の高野山の地も含まれていました。「ニウツヒメ」は高野山の地主神でもあるのです。

高野山の守り神

昔、弘法大師が真言密教の根本道場(本拠地)を求めていた時に、「ニウツヒメ」の御子神である「高野御子大神(たかのみこのおおかみ)」が、白と黒の犬を連れた狩人に化身して、その前に現れました。ふさわしい霊地を知るという狩人のすすめで、弘法大師は白と黒の御神犬にみちびかれ、天野の地へ踏み入れます。

すると「ニウツヒメ」が降臨し、神領高野山を弘法大師へ授けました。これが高野山開山縁起として広く知られる物語です。以来、丹生都比売神社は高野山の総鎮守、真言密教の守護神として崇敬されています。「高野詣で」では、丹生都比売神社にも参拝することが習わしとされました。

高野山麓の霊場

太鼓橋の写真

鎌倉時代の元寇(蒙古襲来)では、御祭神が出陣して蒙古の大軍を撃退したとされ、幕府から紀伊国一之宮(紀伊国で一番尊い神社)に定められます。以来、武士からは武神、勝利の神として信仰され、高野山へ流罪となった真田幸村も参拝したといいます。現在の本殿四殿とその前にそびえる楼門は、室町時代の造営で、国の重要文化財です。

「日本の里100選」に名を連ねる天野の里の美しい景観の中、この丹塗りの社殿や輪橋(太鼓橋)は一層映えて見えます。今も高野詣でで欠かせない参詣地、また様々な歴史がつむがれた舞台として、多くの方々が訪れる霊場です。

丹生都比売神社の神事

【1月第三日曜】御田祭(おんだまつり)県無形民俗文化財

御田祭

平安時代から続く農耕神事で、その年の豊作を祈ります。鎌倉時代頃から現在のような狂言形式で行われるようになりました。面をつけた田人・牛飼たちが、地域の少女が扮する早乙女と共にユーモラスに稲作の様子を演じます。

【4月第二日曜】花盛祭(はなもりさい)

花盛祭

御祭神へ花を捧げ春の訪れを祝うお祭りです。午後には中世に紀の川を船で下った神輿渡御を再現した、華やかな神輿行列が行われます。

【毎月16日】月次祭(つきなみさい)

すずひめと大輝の写真

毎月16日は御祭神の御縁日とされており、月次祭が行われます。(10月は例祭となります。)月次祭の日は、弘法大師をみちびいた御神犬にちなみ奉納された、天然記念物紀州犬のご神犬すずひめ・大輝が公開されます。

インタビューまとめ

日本人にとって、神と仏が共存している現在の信仰の形はごく当たり前とも言えますが、その始まりの歴史については意外と知らないもの。ルーツを辿ればまだまだ私たちの知らない歴史が眠っているのかもしれませんね。

有名な観光スポットも多い和歌山県、秋が深まるこれからの季節にぜひ、歴史探訪に出かけてみてはいかがでしょうか。

丹生都比売(にうつひめ)神社 基本情報 アクセス

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この記事を書いた人

ラボ編集部のアバター ラボ編集部 編集者・取材ライター

歴史と文化遺産に情熱を注ぐ29歳の編集者、山本さくらです。子どもが1人いる母として、家族との時間を大切にしながらも、文化遺産ラボの立ち上げメンバーとして、編集やインタビューを担当しています。旅行が大好きで、訪れる先では必ずその地域の文化遺産を訪問し、歴史の奥深さを体感しています。
文化遺産ラボを通じて、歴史や文化遺産の魅力をもっと多くの方に届けたいと日々奮闘中。歴史好きの方も、まだ触れていない方も、ぜひ一緒にこの旅を楽しみましょう!

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