日本三大川祭の一つである「尾張津島天王祭」。その祭典が行われているのがこの津島神社です。愛知県津島市に位置し、1500年近い長い歴史を持つ神社です。
天王信仰の総本社の一つとして全国にご分霊を持ち、天王祭は多くの人が見に来られます。疫病除けの神様としてコロナ流行の時期にはその収束を願ってご祈祷に来られる方も多く見られました。
今回は、そんな悠久の歴史を持つ津島神社についてご紹介します。
津島神社とは
元々港町であった津島の地。その縁から御祭神である須佐之男命は海を渡って津島に来られ、この神社の始まりとなりました。2040年には創建から1500年を迎える予定で、全国の神社の中でも非常に長く深い歴史と共に歩んできました。現在も疫病除けの神様として地域の人々に親しまれ、観光客の方も多く来られます。
授与品の数も多く取り揃え「こういった御守りが欲しい」という参拝者からの声にも応えています。現在の社殿はおおよそ400年前に建てられたものがそのまま残っており、幾度かの屋根の葺き替え工事などを行い現在までその姿を留めています。現代に生きる私たちにとって、はるか昔のことのように感じられる江戸時代。
今とは価値観も常識も、人々の暮らしぶりも全く違うものでしたが、境内に足を踏み入れれば時を超えて感じられる当時の空気があります。八坂神社と並ぶ天王信仰の総本社として現在も安産祈願や疫病除けの祈願、お子様の祈願など多く方が足を運ぶ神社です。歴史ある神社を後世に伝えていくため、現在はYouTubeやSNSなどの現代のツールも使用し、地域の方のみならず全国の方にその魅力を届けています。
【津島神社 特別インタビュー】
悠久の時を超えて受け継がれる当時の建物とその風景。それを守るために古来より神社の方はもちろん、地域の方々も共に神社を支えてきました。国の重要文化財に指定されている貴重な尾張造の社殿、天王祭、お月見灯篭など誇るべき魅力がとても多い神社です。
それぞれの魅力、特徴について神社の方に詳しくお話を伺いました。
全国で唯一現存する、尾張造の神社
まずは、この神社の歴史をお聞きできますか。
津島神社は、2040年に創建から1500年を迎える非常に歴史の長い神社です。境内の正面に見える楼門は豊臣秀吉が寄進した建物で、神社内で最も古い建物です。その他の建物もおおよそ400年ほど前に建てられたものですが当時のものがほとんどそのまま残っています。ですので、来られた際には400年前の人々が見ていた景観をそのまま見ていただくことができます。
それは貴重ですね!建物ものそのまま、景観もそのままということは、境内に足を踏み入れれば400年前にタイムスリップしたような感覚を味わえるかもしれませんね!
そうかもしれません。社殿は「尾張造(おわりづくり)」という建築様式で造られています。尾張造というのは、左右対称の建築様式、本殿・祭文殿(さいもんでん)・拝殿の3つの社殿を回廊で繋ぐ、祭文殿あるいはその先の渡殿(わたどの)部分で幣殿を兼用するなど様々な特徴があります。この建築様式は尾張地方ならではのもので、現在、このように大きなお社で形が残っている尾張造の建築物は当社のものだけとなります。
この神社だけなんですね!それは本当に貴重ですね。信仰としてはどういった信仰になるのでしょうか。
当社は創建当時より疫病除けの御利益がある神社として親しまれてきました。信仰は祇園信仰と天王信仰の2つがあるのですが、津島神社は八坂神社と並んで全国の天王信仰の総本社として知られています。祇園信仰は牛頭天王(ごずてんのう)と須佐之男命(スサノオノミコト)に対する神仏習合の信仰で、京都にある八坂神社がその総本社の一つです。津島神社のご分霊も全国にあり、現在は青森から大分までと北から南まで幅広い地域にご分霊があります。
青森から大分とはすごいですね!とても広がりを感じます。
実はこの津島という地域は江戸時代までは港町でした。ですから、様々な物が海を渡って入ってくるわけですが、そういった縁からとても広い地域へ信仰が広がったのではないかと考えられています。全国に津島神社という名前の神社は多くありますから名前は聞いたことがある、という方は多いのですが皆様「こんなに大きなお社がある神社だとは思いませんでした」と仰る方が多いです。
コロナ収束のご祈祷にも。疫病除けの神様。
ええ、本当にそうだと思います!お写真などで見るだけではもったいないと思いますので、ぜひHPなどを見て気になられた方は現地へ足を運んでほしいと思います!では、津島神社様の歴史についてお聞きできますか。
創建は、欽明天皇元年(540)に須佐之男命(スサノオノミコト)が津島に来られたことが始まりです。須佐之男命をお祀りする神社は全国に多数ありますが、そのほとんどが出雲の国か陸路で来られたという所がほとんどです。ですが、津島では先ほどお話したように港町でしたから須佐之男命は海を渡って来られたと言われています。須佐之男命は日本の神様の中で唯一朝鮮へ渡っている神様なのですが、朝鮮から出雲へ戻る道中、この津島に寄られたという話があります。
なるほど。港町であったこの土地ならではのエピソードですね!神社建築や周辺景観の特徴についてはいかがでしょうか。
建築部分で一番特徴的なのはやはり尾張造の社殿です。社殿は国の重要文化財に指定されており、400年前に建てられた建物がそのまま残っているとても貴重なものです。
境内にも緑がとても多い印象です。夏の暑い日でも日よけが多く涼しく過ごせそうですね。
そうですね。これは多くの神社さんでもそうであるように、神社の境内やその周辺に本殿や拝殿を囲むように配置されている森林を鎮守の森と呼びます。津島神社でも鎮守の森を作り、緑豊かな場所として来られる方々に心地よく過ごしていただけるよう工夫しています。
これだけ立派な神社ですから、観光客の方だけでなく地域の方も多く来られますか。
ええ、早朝の時間であればご近所の方は散歩のついでに寄られる方もいらっしゃいますし、地域の氏神としてお参り頂いています。特にお正月には多くの人出があります。妊婦さんやお子様が生まれた方であれば、産まれる前の安産祈願からはじまり、お宮参り、七五三と節目でご祈祷に来られる方は多いです。もちろん、厄除けのご祈祷に来られる方も多く、特にコロナが最も流行していた時期には収束を願われる方も多く来られていました。もちろん、地鎮祭や入居清祓などの出張祭典も随時行っています。海外からのお客様は今のところあまり多くはありませんが、ひどく混み合うことはありませんので、ゆっくりと参拝し境内を巡っていただける神社かと思います。
交通守りや学業守りの他、十二支守や子授守など授与品の数もとても多いですね!
はい。やはり元々疫病除けの神様なので、コロナが最も流行していた時期には江戸時代に配布していた特別なお守りを出すということも行いました。これは本当に多くの方にお求めいただきました。元々こちらでご用意していた授与品もありますが、来られた方から「こういった御守りはありませんか。」と言われることが多いものは、そのご要望にお応えする形で作ったものもあります。
神社での行事
疫病除けの御利益がある神社として知られてきた津島神社。現在でも厄除けのご祈祷に来られる方は多く、新型コロナの流行以降は特に多くなりました。そんな津島神社では一年を通して様々な神事・祭事が執り行われていますが、中でも最大の行事は「尾張津島天王祭」というお祭り。これは日本三大川まつりの一つとされており、全国の夏祭りの中でも非常に華やかで煌びやかなものです。お祭り自体は600年ほどの歴史があり、昭和55年には「尾張島天王祭の車楽舟行事」が国の重要無形民俗文化財に指定され、平成28年にはユネスコの無形文化遺産にも登録されています。毎年7月の第四土日に行われ、その際には日本人の観光客のみならず海外からの方も見に来られます。
お祭りの際には5艘の巻藁船(提灯船)が車河戸(くるまこうど)から天王川に向かって漕ぎ出し、その屋台の上には500個以上の提灯が提げられています。この提灯は、天王祭りに協賛していただいた企業様・個人様のお名前が刻まれており、その光景は遠くから眺めれば美しく、近くに来て見ればとても迫力と見応えのあるもので目にした人々は誰しもが見とれてしまうような美しい光景です。午後6時30分から車河戸で、巻藁船の提灯の点灯「如意点火(にょいてんか)」が始まり、午後8時15分からは御旅所に向け出発するところが、お祭りの中で最も見どころとなる場面です。終焉後、船は提灯を外し朝祭のために飾りを変え朝祭のための準備を行います。いつから始まったお祭りであるか、明確には分かっていませんが現在の形になったのは江戸の中期頃だと言われています。
また、地域の観光協会や民間団体と協賛した展示会の実施や、秋のお月見の時期には「お月見灯篭」という行事も境内で実施しています。イベント以外にも、YouTubeやSNSでの配信など若い方にも神社に興味を持っていただけるよう、様々な工夫を凝らしています。
お正月の際には人出も多く、名鉄津島駅からも1キロほど距離があるため元日~5日までの午前10時~午後4時、毎時間3便程度の駅から神社間の無料シャトルバスが運行しています。
今後の展望
2040年に創建から1500年を迎える津島神社。16年後に訪れるその時に向けて、社殿の屋根の葺き替え工事なども計画しています。全国で唯一現存する尾張造の社殿であるということもさらに周知を進めていきたいと考えています。織田信長、豊臣秀吉、そして尾張の徳川家からの崇敬を集めて現在のような立派な社殿となった津島神社。
その荘厳な存在をこの先の世にも継承していきます。訪れた際にはぜひ本殿や拝殿などの建築物だけでなくそこに広がる景観も見てほしいと思います。
インタビューまとめ
400年という年月の間に、この国に、世界にどれだけの変化があったでしょうか。電気が発明され車や鉄道が普及し、薪で沸かしていたお風呂も、お鍋でぐつぐつ炊いていたお米も、たらいで洗っていた洗濯物も、全て指先でボタンを一つ押せば自動でできるようになりました。
インターネットが加速度的に普及し、画面を挟んで一瞬で地球の裏側の人間とコミュニケーションを取ることが可能になりました。しかし、どれだけ年月を経ようとも変わらないものもあります。この津島神社には、そんな400年前と同じ風景が広がっています。
当時の建物、そして当時の武将たちが見た風景がそのまま残っています。テクノロジーが進化しても変わらないもの、それを感じられる場所は今やとても貴重な場所です。そこにはきっと現代とは違う時間が流れていると思います。目まぐるしく変化する現代の生活に少し疲れた時、この津島神社に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
津島神社 アクセス
住所:愛知県津島市神明町1
TEL;0567−26−3216
URL:https://tsushimajinja.or.jp/
コメント