MENU

錦帯橋 世界唯一の構造が魅せる、貫禄の名橋

錦帯橋写真

日本三名橋の一つに数えられる、山口県岩国市の錦帯橋。「錦の帯」と書くその名にふさわしく、遠くから眺めるその姿は「美しい」という一言に尽きます。

自然と調和しながらも圧倒的な存在感を放つ橋。観光客の方はもちろん、地元の方にも日々の暮らしの中で利用され続けています。他の橋には見られない特徴的な構造や、その強度を保つための工夫、そして今後の展望について伺いました。

目次

錦帯橋とは

帯橋の写真※下から見上げたもの

長崎県の「めがね橋」、東京都中央区の「日本橋」、そして山口県岩国市の「錦帯橋」。

国内有数の名橋に数えられるこの錦帯橋は1673年に創建され、令和5年に創建から350年を迎えました。江戸時代から受け継がれてきた錦帯橋ですが、その姿は当時からほとんど変わっていません。橋の強度も現在の基準と同程度のもので、修繕を繰り返した歴史はあれその姿は創建当時を思わせるものです。

それは350年前のこの国に、その強度を保つ技術が存在していた証明でもあります。その建築法は独特で、国内唯一の木組みにより支えられています。

錦帯橋 特別インタビュー

橋の下を穏やかに流れる錦川、河原に響く子どもたちの声、そして四季折々の草花に囲まれた二つとない景色の中に悠然と現れる錦帯橋は、見る人々を圧倒する存在です。そんな錦帯橋の魅力やエピソードについて伺いました。

生活にも利用された名橋

錦帯橋望遠
編集部

一目見て立派な造りだと分かる錦帯橋ですが、その建築法も独特だと伺いました。

観光振興課職員

はい、河原に下りて上を見上げると橋の裏側が見えますよね。そこに見える木組みの組み方はこの橋ならではの特徴的な方法で組まれているようです。日本の橋の中でも唯一のものだと聞いています。遠目で見て綺麗な橋、というのはたくさんあると思いますが橋の裏側にも見応えがある橋、というのは珍しいのではないかと思います。

編集部

この建築技法は日本でも錦帯橋が唯一だと聞いています。

観光振興課職員

そのようです。本当に、岩国のここでしか見られない光景なので貴重だと思います。そういえば、こんな逸話がありますよ。創建当時、この橋の造りがあまりに独特なので釘を一本も使わずに造られたという話があったそうなんですが実際にはそんなことはなく、釘はたくさん使われているんです。おそらく、建築に携わった人や地元の人がこの橋をより立派で貴重なものだと周知させたいがために、そういったことを言い出したのではないかと、そんな話があるんです(笑)

編集部

少し「良い恰好」をしようとした、ということでしょうか(笑)

観光振興課職員

ええ、おそらくそういった理由だと思います(笑)

編集部

私も実際に訪れたことがあるのですが、想像していたよりもずっと大きく立派な橋だと感じました。

観光振興課職員

そうですね、5つの橋が連なっているので造りだけでなくその大きさも特徴の一つだと思います。錦帯橋の名前の由来ははっきりしていませんが、かつては地域の人々の生活道路としても使われていたようです。

編集部

それは現在でも同じでしょうか。

観光振興課職員

はい、現在でも地域の方にとっては普段から利用する橋であり周囲の小学校に通う子どもたちは通学路としても利用していますよ。

編集部

観光名所が通学路とはなかなか贅沢ですね!

観光振興課職員

そうかもしれませんね。もちろん観光で訪れる方も大勢いらっしゃいますが今も地域の方にとっては日常の風景の一つとして親しまれています。

編集部

創建のきっかけとなった出来事などは、何かあるのでしょうか。

観光振興課職員

大きなきっかけ、というのはハッキリしていませんが橋の下を流れている錦川は、雨が降った際に水かさが増して架かっていた橋が流されてしまうということがあったようです。そこで流されない橋を造ろうという動きがあったのが創建のきっかけのようです。

古材も無駄にしない、リサイクルの橋

岩国駅のバス停ベンチ
編集部

周囲の景観も涼しげがあり、とても美しい空間だと感じました。

観光振興課職員

そうですね、あまり街中過ぎず程よく整備されている所にあります。バス停もすぐ近くにありますし、アクセスの利便性は良いと思います。お城がある方へ橋を渡ると(きっ)(こう)公園という公園があるんですが、そこは市民の方の憩いの場でもありますし観光客の方の休憩所としても良いスポットだと思います。

編集部

周囲には植栽も豊かなだと感じましたが、どういった植物を楽しめますか。

観光振興課職員

春は梅から始まり、桜の時期も綺麗です。その後サツキ、花菖蒲、紫陽花と続き季節ごとの鮮やかな植物を見ていただけますよ。

編集部

自然を肌で感じて楽しめるスポットなんですね!
そういえば、訪れた際に岩国駅のバス停にも立ち寄ったのですが、バス停のベンチに錦帯橋の古い部材が使われているのを見ました。あれはいつ頃から使用されているんでしょうか。

観光振興課職員

つい数年前に岩国駅がリニューアルして新しくなったんです。その時に駅前のロータリーなども全て整備され、橋の古材を使おうということになりました。使用されている古材は平成の架け替えの際に排出されたもので、周囲の劣化している部分を削り落して綺麗にしたものを使用しています。

編集部

とても良い取り組みだと思います!橋としては使用できないけれど、そういった日常で使用する場所に生まれ変わることで、いつまでも色褪せないというのも素敵ですね。

観光振興課職員

そうですね。使わないから捨てるのではなく、新しい活躍の場を与えてあげることも大切だと感じています。

地元の高校生が!?アナログでも確実な健全度調査

高校生が点検している
編集部

その立派な姿が印象的な錦帯橋ですが、現在でも定期的に強度検査などは行われているんでしょうか。

観光振興課職員

はい、現在でも5年に一度地元の高校生が大人数で橋の上に乗りその強度を確認していますよ。

編集部

高校生がですか!?それはすごく面白い情報ですね!その高校生というのは有志の方たちなんでしょうか。

観光振興課職員

学校の方々と連絡を取って協力をお願いしています。「健全度調査」と言い、5年に一度の頻度で行っています。

編集部

検査や点検、というとパッと浮かぶのは職人による~などのイメージですが、地元の高校生が、というのは全国の観光地でも珍しいと思います!

観光振興課職員

そうですよね(笑)ただ、5年に一度なので高校3年間在籍していても回ってこない代の学生たちもいるわけです(笑)私は当たらなかった代なので、やはり地元の人間としては少し悔しいな、という気持ちもあります(笑)

編集部

たしかに、かなり貴重な経験ですよね!同じ地元や高校の出身でも、調査をやった代と関われなかった代があるんですね。

観光振興課職員

そうです。もはやこれがイベントになっていると言えるかもしれませんね(笑)今年はちょうどその5年に一度の年にあたるので、9月21日に健全度調査を実施しました。その後、調査の延長で今年の12月~令和7年の3月上旬まで橋に幕が掛かりますので今ご覧いただいている橋の姿は当分見えなくなってしまうんです。

編集部

そうなんですね。少し残念ではありますが、その幕が掛かった姿というのもまた貴重だと思います。

観光振興課職員

ええ、5年に一度ですからその姿を見れた方はある意味ラッキーかな、とも思います!

周辺でのイベント

錦帯橋祭り

観光名所でありながら地域の方にとっても暮らしに欠かせない橋となっている錦帯橋。そんな地域の方との交流を図る上で、イベントも多数行っています。大きなイベントとしては毎年4月29日に行われる「錦帯橋祭り」。大名行列や奴道中、岩国藩鉄砲隊保存会による鉄砲隊演武、岩国太鼓など多数の催しが執り行われ、地元の方はもちろん観光で訪れた方にも楽しまれています。

季節の風物詩として親しまれているのは、錦帯橋のライトアップ。毎年春と夏の年2回行われ、期間は5ヶ月程度と長期間にわたって錦帯橋が色鮮やかに輝きます。季節により色味も異なり、夏場は涼しげな色で演出するなど時季に合わせた演出となっています。また、6月1日~9月10日の3ヶ月にわたって行われるのが「錦帯橋のう飼」。吉香公園内で飼育されている鵜を使い行われ、期間中の8月の1ヶ月間は「錦川 水の祭典月間」となり、浴衣を着て鵜飼の船に乗るゆかたDAYなどを含むイベントも行われています。大規模な花火大会は現在行われていませんが、期間中には2分間だけ花火を打ち上げる日も何日かあり、家族連れの方や友達同士などが多数見られます。

今後の展望について

現在、世界文化遺産への登録を目指してシンポジウムへの参加などを行っています。唯一無二の工法で架けられた貴重な橋。日本でも岩国だけで見られるこの風光明媚な風景を含めて、ぜひ世界遺産へ登録されてほしいと願います。世界遺産へ登録される日を心から待っています。

錦帯橋のまとめ

山口県の観光名所の一つとして名高い錦帯橋。過去も現在も人々の暮らしに必要不可欠な橋として親しまれ、昔からの姿を変えずに在り続けています。涼やかな川の流れを聞きながらゆっくりと橋のてっぺんへ上ると、目の前の山はもちろん岩国の町並みが見渡せます。開けた空間に映る人々が行き交う姿は、とても穏やかでゆったりとした時間を感じさせます。時代が令和に移ろうとも、江戸から受け継がれてきたこの光景は生涯変わることはないでしょう。

アクセス

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

ラボ編集部のアバター ラボ編集部 編集者・取材ライター

歴史と文化遺産に情熱を注ぐ29歳の編集者、山本さくらです。子どもが1人いる母として、家族との時間を大切にしながらも、文化遺産ラボの立ち上げメンバーとして、編集やインタビューを担当しています。旅行が大好きで、訪れる先では必ずその地域の文化遺産を訪問し、歴史の奥深さを体感しています。
文化遺産ラボを通じて、歴史や文化遺産の魅力をもっと多くの方に届けたいと日々奮闘中。歴史好きの方も、まだ触れていない方も、ぜひ一緒にこの旅を楽しみましょう!

コメント

コメントする

目次